韓国でレンタカーを借りたり、長期滞在で運転免許を切り替えたりする人が増えている。ただし、韓国の交通ルールは日本とは似ているようで細部がかなり違い、感覚のまま運転すると事故や違反切符につながりかねない。今回はソウル在住者の視点から、日本人が特に誤解しやすいポイントに加え、国際運転免許証やレンタカーの保険、大都市特有の運転文化まで踏み込んでまとめる。
1. まず大前提:右側通行、ハンドルも逆
韓国は日本と違い右側通行で、車両のハンドル位置も左側にある。つまり日本の感覚とは左右がすべて逆だと考えたほうがいい。交差点での車線感覚、車線変更時に確認すべきミラーの向き、対向車が来る方向まで、日本での運転経験がそのまま裏目に出ることがある。レンタカーに乗る前に、駐車場など人のいない場所で数分間、ウインカーやワイパーの位置も含めて感覚を慣らしておくことを強くすすめる。
2. 左折は基本「信号待ち」― 青信号だけでは曲がれない交差点が多い
日本では対向車の途切れを見て左折(韓国式にいう右折相当)することが多いが、韓国の多くの交差点では、左折専用の矢印信号(좌회전 신호)が出るまで待つのが原則だ。直進の青信号が出ていても、左折矢印が点灯していなければ左折してはいけない交差点がほとんどで、「비보호좌회전(非保護左折)」の表示がある交差点に限り、対向車に注意しながら青信号のうちに左折することが認められている。この表示の有無を毎回確認する癖をつけておきたい。
3. 右折は非保護、しかし2023年から一時停止が義務に
一方、右折(日本式の左折に相当)は基本的に信号待ちが不要な「非保護(비보호)」の扱いだ。ただし2023年1月の道路交通法施行規則改正により、交差点で右折する際は、前方信号が赤であるかどうかにかかわらず、横断歩道の手前でいったん完全に一時停止し、歩行者の有無を確認してから徐行して進む義務が課された。「歩行者がいなければ止まらなくていい」という感覚は現在の韓国では通用せず、一時停止を怠ると信号無視と同等に扱われ、乗用車で6万ウォンの反則金が科される。事故多発地点には右折専用の3色信号機が別途設置されている交差点も増えている。
4. スクールゾーン(어린이보호구역)は別世界の厳しさ
幼稚園・小学校・保育施設の周辺に指定される「スクールゾーン」では、制限速度が時速30km以下に定められている。2019年に忠清南道・牙山で起きた児童死亡事故をきっかけに、通称「ミンシギ法(민식이법)」が制定され、スクールゾーン内の速度違反カメラ設置が義務化されたほか、児童に死傷を負わせた場合の刑罰が大幅に強化された。恐ろしいのは、制限速度をきちんと守っていたとしても、前方不注意など「子どもの安全に配慮する義務」を少しでも怠ったと判断されれば、特定犯罪加重処罰法が適用され重い刑罰を受ける可能性がある点だ。違反時の反則金・過料も一般道路の2〜3倍に設定されている。スクールゾーンの標識を見たら、とにかく最徐行を徹底したい。
5. 国際運転免許証は「1年」だけ有効
日本で取得した国際運転免許証(ジュネーブ条約タイプ)は、韓国入国後1年間のみ有効だ。運転する際は国際免許証だけでなく、日本の運転免許証本体とパスポートも必ず携帯する必要がある。1年を超えて韓国に滞在し続ける場合は、国際免許証としては使えなくなるため、長期滞在者は韓国の運転免許への切り替え(免許互恵制度による書き換え)を検討する必要がある。
6. レンタカーの自車保険は「フル」がおすすめ
韓国でレンタカーを借りる際、一般的な自車損害免責制度(CDW、1日1万5000ウォン前後)と、より補償範囲の広い完全補償(1日2万5000ウォン前後)の2種類が用意されていることが多い。一般的なCDWはタイヤ・ホイール、フロントガラス、車体下部の損傷をほとんど補償しないため、返却時のトラブルが最も起きやすいのがこの部分だ。特に韓国は近年、テスラをはじめとする輸入車・高級車の登録台数が急増しており、2026年上半期には輸入乗用車が新規登録全体の24.1%を占めるまでになった。街中を走る車の中に日本の感覚以上に高額な車種が交じっているということは、それだけ「もらい事故」や接触時の相手方修理費も高額になりやすいということでもある。多少割高でも完全補償に加入しておくほうが、結果的に安心かつ安上がりになるケースが多い。また、駐車場での接触事故に備えてドライブレコーダー(韓国では블랙박스=ブラックボックスと呼ばれる)の有無も契約時に確認しておきたい。韓国では自家用車の大半にブラックボックスが搭載されており、事故やあて逃げのトラブル時に映像が証拠として重視される文化が根付いている。
7. 高速道路料金はハイパス(하이패스)が主流
韓国の高速道路の料金所は、日本のETCにあたる「하이패스(ハイパス)」の利用が主流になっている。ハイパス端末を搭載していないレンタカーでも、近年は車両ナンバーを自動認識して後日請求する「スマートハイパス」方式に対応する車両・区間が増えており、通行料は登録済みの支払い方法へ後日課金される仕組みだ。レンタカー契約時には、通行料の精算方法(後日請求か、専用カード貸与か)と、精算手数料(通行料の一定割合、または1件あたり定額)が発生するかどうかを必ず確認しておこう。なお、ハイパス端末がない車でうっかりハイパス専用レーンに進入してしまっても、料金所のバー(遮断機)は二次事故防止のため大抵そのまま開く設計になっており、通行自体はできてしまう。この場合、後日車両ナンバーをもとに未納通行料の請求がSMS・郵送・アプリ通知などで届く仕組みなので、慌てて一般レーンを探して車線変更を繰り返す必要はない。料金所の直前で「一般レーンはどこだ」とキョロキョロして急な進路変更や急ブレーキをするほうがよほど危険で、事故のリスクが高い。多少通行料の精算が後回しになっても、素直にハイパスレーンへそのまま進んでしまうのが安全だ。ただし未納通行料を長期間放置すると、最大で通行料の10倍程度まで加算金・過怠金が膨らむケースもあるため、通知が届いたらできるだけ早く「하이패스(hipass.co.kr)」の未納照会ページやアプリで確認し、早めに支払っておくことを忘れずに。
8. お酒を飲んだら迷わず「代理運転」
韓国では飲酒後の移動手段として「代理運転(대리운전)」が広く定着している。専用アプリや電話で呼ぶと、保険加入済みのドライバーが自宅や指定先まで自分の車を運転して送り届けてくれるサービスで、深夜・早朝を含め24時間対応しているのが一般的だ。料金は距離・時間帯・待機の有無によって変動するが、飲酒運転による重い罰則・免許取り消しのリスクを考えれば、少額の出費で安全な帰宅手段を確保できる合理的な選択肢といえる。
9. 「歩行者優先」でも過信は禁物
韓国でも法律上は横断歩道での歩行者優先が原則だ。しかし現実には、信号を守らないタクシーや配達バイクが横断歩道に平気で突っ込んでくる場面が珍しくない。歩行者側であっても「青信号だから絶対安全」と思い込まず、横断する前に必ず左右を確認する習慣をつけたほうがいい。運転する側も、法律上の建前と実際の交通マナーには差があることを前提に、交差点付近ではとにかく速度を落として周囲を確認する姿勢が欠かせない。
まとめ
右側通行という大前提に加え、左折は信号待ちが基本、右折は非保護だが一時停止が義務、スクールゾーンでは厳格な刑事責任が問われるなど、日本とは異なるルールが韓国にはいくつも存在する。国際免許の有効期限やレンタカー保険、飲酒時の代理運転といった実務的な備えもあわせて押さえておけば、初めての韓国ドライブでも余計なトラブルを避けやすくなる。「歩行者優先」という建前を鵜呑みにせず、運転する側も歩く側も、交差点では常に一拍おいて周囲を確認する。それが、韓国の道路で安全に過ごすための一番の近道だ。

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