今日は韓国のチュソク ─ 旧暦で毎年日付が変わる「二大名節」ソルナルとチュソクは何の日か。膳、セバ、スパムギフト、名節ストレス、そして仁川空港へ向かう人たち

今日、2026年9月25日は韓国のチュソク(여석・秋夕)である。ソウルの道路はがらんとし、商店の半分は閉まり、高速道路と空港だけが混み合う。日本人が韓国で一番戸惑うのは、この「最大の祖日が毎年日付を変える」ことだ。チュソクとソルナル(설날・旧正月)は旧暦で決まるため、去年は10月、今年は9月、来年はまた別の日だ。この記事では、韓国の二大名節が何の日なのか、なぜ日付が動くのか、当日に韓国人は何をしているのか、日本の正月・お盆とは何が違うのか、そして旅行者が注意すべきことを、現地で暮らす立場から整理する。

1. なぜ毎年日付が違うのか ─ 韓国の名節は旧暦で決まる

ソルナルは旧暦1月1日、チュソクは旧暦8月15日。日本が明治の改暦で正月もお盆も新暦に移したのに対し、韓国は日常生活は新暦でも、名節だけは旧暦のまま残した。その結果、日付は毎年動く。チュソクは2024年が9月17日、2025年が10月6日、2026年が9月25日、2027年は9月15日。ソルナルは2026年が2月17日、2027年は2月6日。最大で一か月近くずれるので、韓国人でさえ毎年カレンダーで確認する。

法定休日は当日と前後1日ずつの3日間。日曜と重なった場合は振替休日(대체공휴일)が付く。2026年は9月24日(木)〜26日(土)が休日で、日曜と繋げて4連休。年によっては間の平日が臨時休日になり、最長で9〜10連休になることもある。日本のゴールデンウィークと年末年始を合わせたような存在が、年に2回あると思えばいい。

2. 何の日なのか ─ 先祖に挨拶し、家族が集まる日

両方とも核にあるのは「先祖への挨拶」である。当日の朝、長男の家に親族が集まり、先祖のための膳(차례・茶礼)を供えて拝礼する。その後、先祖の墓へ墓参り(성묘・省墓)に行く。チュソクの前には墓の草刈り(벌초)をする風習もあり、週末の高速道路がそのために混む。日本のお盆とそっくりだが、韓国は儒教の祖先崇拜が強く、形式も厳格だった。

ソルナルにはもう一つ、「年長者への挨拶」がある。韓服を着て祖父母や両親に床について拝むセバ(세배・歳拝)をし、子どもはお年玉(세뱇돈)をもらう。ソルナルの朝にはトックク(떡국・餅スープ)を食べ、「これを食べて一つ年を取る」と言う。チュソクには新米で作った半月型の餅ソンピョン(송편)を家族で作る。「ソンピョンをきれいに作るときれいな子が生まれる」という言い伝えもある。

つまりソルナルは日本の正月、チュソクは日本のお盆と収穫祭を合わせたもの、と理解すれば近い。違うのは規模だ。韓国ではこの二つが他のどの休日よりも圧倒的に大きく、「民族大移動(민족 대이동)」と呼ばれる。連休中の移動人口は延べで約3,000万人。人口5,200万の国で、である。

3. 当日のソウル ─ 道は空き、店は閉まり、高速道路は地獄

名節当日のソウルは、一年で最も静かな日である。住民の多くが地方の実家に帰るので、普段は渋滴する市内の道路ががらんとする。一方でソウルから地方へ向かう高速道路は、普段4時間の釜山までが8〜10時間かかる。テレビは「現在の帰省渋滴」を一日中中継し、「ソウルから釜山まで何時間」がニュースの見出しになる。KTXの切符は一か月以上前の予約開始日に売り切れる。

商店は、大型マートと百貨店が当日は休業、個人の食堂も多くが2〜3日休む。開いているのはコンビニ、チェーンのカフェ、一部のフランチャイズ食堂、そして観光地の店。景福宮などの古宮は名節連休中は無料開放され、韓服を着た家族で賡わう。旅行者にとっては「人の少ないソウル」を見られる珍しい機会だが、行きたかった店が閉まっているリスクは高い。

4. 名節の贈り物 ─ スパムと食用油がなぜ高級ギフトなのか

日本人が韓国のマートで驚くのが、名節前に並ぶギフトセットだ。スパムの缶詰セット、食用油とツナ缶のセット、シャンプーと歯磨き粉のセット──これらが美しく包装されて数万ウォンで売られている。韓国のスパム消費量はアメリカに次ぐ世界2位で、そのかなりの部分が名節ギフトである。上司や取引先には韓牛セットや高麗人参、親戺には果物の箱。ギフトのランクが人間関係のランクを表すという点では、日本のお中元・お歳暮と同じだ。

5. 名節ストレス ─ 嫁、離婚、そして「先祖は電を求めていない」

名節は楽しい日であると同時に、韓国で最もストレスの多い日でもある。膳の準備は伝統的に嫁の仕事で、多い家では当日の朝に並べる料理が20種類を超えた。前日から何時間もチアン(전・チアン入りの焼き物)を焼き続け、義理の両親の前で立ち働き、「いつ結婚するのか」「子どもはまだか」と聞かれる。「名節症候群(명절 증후군)」という言葉があり、名節直後の離婚申請が年間で最も増えることは統計でも確認されている。

この流れを変えたのが2022年だ。儒教の総本山である成均館(성균관)が「膳の標準案」を発表し、「チアンは焼かなくていい」「料理は9品で十分」「果物の並べ方に決まりはない」と公式に宣言した。「先祖は嫁の苦労を望んでいない」というこの発表は大きなニュースになり、以降、膳を簡素化する家、やめる家、レストランで済ませる家が増えた。

6. 変わりつつある名節 ─ 実家ではなく仁川空港へ

今の名節のニュースで、帰省渋滴と並んで必ず報じられるのが仁川空港の混雑である。連休中の出国者は一日約20万人、行き先の上位は日本。実家に帰らず家族で海外旅行に行く、あるいはソウルのホテルで過ごす「ホカンス」を選ぶ人が年々増えている。日本では年末年始やお盆に旅行するのが普通だが、韓国ではつい最近まで「名節に帰らない」こと自体が非難の対象だった。その空気が、この10年で大きく変わった。

もう一つの変化は、「年」との関係だ。韓国では長らく「ソルナルに全員が一つ年を取る」数え方(数え年)が使われ、生まれた瞬間に1歳、正月に2歳になった。2023年6月に法律で満年齢に統一されたが、日常会話では今も「ソルを過ぎたら何歳」という感覚が残っている。韓国人に年を聞くと答えが二つ返ってくる理由は、ここにある。

7. 日本人旅行者へ ─ 名節に韓国へ行くなら

名節連休に韓国を訪れるなら、覚えておくことは四つ。一つ、日付は毎年違うので必ずその年のカレンダーを確認する。二つ、当日と前後は大型マート・百貨店・個人店が閉まる。三つ、KTXと高速バスは早々に満席、レンタカーで地方へ行くのは渋滴で無謀。四つ、その代わりソウルは空いていて、古宮は無料、韓服の人たちを街で見られる。「韓国の普段」を見たいなら避けるべきで、「韓国の特別な日」を見たいなら選ぶべき日だ。

まとめ

ソルナルとチュソクは、旧暦で決まるため毎年日付が動く、韓国で圧倒的に最大の名節であり、先祖と家族に挨拶する日である。そして今、その形は大きく変わりつつある。膳を簡素化し、実家ではなく空港へ向かい、それでも当日の朝にはトッククとソンピョンを食べる。今日、韓国の家々ではそういう朝が始まっている。この記事を読んでいるあなたの韓国人の友人に、「즐거운 추석 보내세요(楽しいチュソクを)」と一言送ってみてほしい。

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