日本のスーパーに慣れた人が韓国の大型マートに入ると、まず売り場の大きさと商品の包装単位に驚く。牛乳はリットル単位、ネギは束、白菜は一玉、豚肉はキロ。そして「1+1(원플러스원)」と書かれたシールがあちこちに貼られている。一方で、伝統市場(전통시장)に行けば値札のない商品と値切り交渉、「デン(덤・おまけ)」の文化が今も生きている。この記事では、韓国のマートと伝統市場の使い方を、日本との違いを軸に整理する。
1. 三大マート ─ Eマート、ホームプラス、ロッテマート
韓国の大型マートは三社が占めている。Eマート(이마트)、ホームプラス(홈플러스)、ロッテマート(롯데마트)。日本のイオンやイトーヨーカドーと似ているが、規模はコストコに近い。地下に巨大な駐車場があり、週末は家族で車で行って一週間分を買う。カートは日本の倍の大きさで、使うには100ウォン硬貨を入れて鎖を外す。返すと硬貨が戻る。
コストコも韓国では大人気で、ソウルの店舗は世界でも売上上位だ。韓国のコストコでは現地のカード会社一社と提携しているので、日本のカードでは払えないことがある。現金を持って行くのが安全だ。
2. 日本と違うルール ─ 月に2回の義務休業日
韓国の大型マートには法律で定められた義務休業日(의무휴업일)がある。多くの地域で第2・第4日曜日が休みで、この日にEマートへ行ってシャッターの前で立ち尽くす外国人は多い。2012年に伝統市場を守る目的で導入されたもので、効果があるかは今も論争中。最近は日曜ではなく平日に休む地域も増えてきた。週末にマートへ行くなら、必ずその店の休業日を調べてから行くべきだ。
もう一つ日本と違うのはレジ袋だ。韓国の大型マートでは2019年から使い捨てのビニール袋が全面禁止されている。売ってもいない。代わりにレジの後ろに「自律包装台(자율포장대)」があり、店に届いた商品の段ボール箱とテープが置いてあって、客が自分で箱に詰めて帰る。日本の「レジ袋いりますか」は韓国にはない。
3. 「1+1」と「2+1」 ─ 韓国の定番セール
韓国のマートとコンビニで最もよく見るのが「1+1」だ。一つ買うと同じものがもう一つ付いてくる。「2+1」は二つ買えば三つ目が無料。日本の「二つで割引」とは発想が違う。値下げではなく数を増やす。だから韓国の家庭の冷蔵庫は大きい。一人暮らしではこの仕組みが不利だという声もあり、最近は小容量の商品や「小さなマート(스퍼・スーパー)」も増えてきた。
4. 伝統市場 ─ 値札のない商品と「デン(덤)」の文化
ソウルの広藏市場(광장시장)や南大門市場(남대문시장)は観光地として有名だが、韓国の伝統市場は今も生活の場だ。各地域に「○○市場」があり、野菜、魚、肉、惣菜、キムチを売っている。値札がない店が多く、「これいくら」「ちょっと安くして」という会話が買い物の一部だ。
そして「デン(덤)」。買ったものに店主がおまけを足す文化で、野菜を一握り多く入れたり、魚を一匹足したりする。常連になるとデンが増える。日本の商店街にも昔はあったが、韓国では今も普通に生きている。「덤 좀 주세요(デンちょっとください)」と言えるようになれば、韓国生活の中級者だ。
伝統市場では現金が強い。カードも使える店が増えたが、「現金なら安くする」と言われることは今もある。政府は伝統市場で使える「オンヌリ商品券(온누리상품권)」を割引で売って、市場を守ろうとしている。
5. 新しい主役 ─ クーパンと「夜中に注文して朝に届く」生活
実は今の韓国人の多くは、マートにも市場にも行かない。クーパン(쿠팥)の「ロケット配送」で夜中に注文した食材が翌朝に玄関に届く。マーカーリー(마켓커리)の「明け方配送」は夜11時までに注文すれば朝7時前に届く。日本のネットスーパーとはスピードが違う。共働きが多く、家にいない時間が長い韓国では、この仕組みが一気に広がった。
その結果、大型マートは売上を落とし、店舗を閉め、式場の一部をレストランやジムに変えている。「マートの義務休業日は伝統市場ではなくクーパンを助けている」という皮肉が、韓国ではよく語られる。
6. 旅行者向け ─ マートと市場で何を買うか
マートではキムチ、海苔、ラーメン、コチュジャン、チューブのコチュジャン、小包装の干し明太。市場ではその場で食べるビンデック、マヨギキンパプ、ユクケ。注意点は三つ。マートの義務休業日を確認すること、レジ袋はないので袋を持って行くこと、市場では少額の現金を持つこと。そして伝統市場では、日本語で声をかけてくる店は観光客向けの価格であることが多い。地元の人が並んでいる店を選ぶのが基本だ。
まとめ
韓国の買い物は、巨大なマートと値札のない市場、そして夜中のアプリの三つで回っている。月二回の義務休業日、レジ袋の全面禁止、「1+1」、デンの文化。どれも日本とは少しずつ違う。一番の違いは、韓国では買い物が「交渉」であり続けていることだ。市場でデンをもらえた日、韓国の生活は少し楽しくなる。

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