BLACKPINK(블랙핑크)は日本では「世界で一番有名なガールズグループ」として知られている。コーチェラのヘッドライナー、ビルボードの記録、ラグジュアリーブランドのアンバサダー。だが韓国から見るBLACKPINKの物語には、少し違う層がある。2NE1の後継として作られたYGの「7年ぶりのガールズグループ」、韓国国内では意外にヒット曲が少ないという指摘、YGの創業者ヤン・ヒョンソク(양현석)のスキャンダルと空白期、そして4人が別々の事務所で個人活動をしながらグループを維持するという前例のない形。この記事では、韓国で暮らす立場から、韓国社会がBLACKPINKをどう見ているかを整理する。
1. 2016年、YGの「7年ぶり」 ─ 2NE1の影とともにデビュー
BLACKPINKは2016年8月、「BOOMBAYAH」と「WHISTLE」の2曲同時でデビューした。所属はYGエンターテインメント。2NE1の解散が近づく中、YGが7年ぶりに送り出したガールズグループで、韓国では「2NE1の後継」という視線が最初からついて回った。「WHISTLE」はデビュー曲として音楽番組1位を取り、韓国では「YGらしいヒップホップ系のガールズグループが戻ってきた」と歓迎された。同時に、2NE1のファンからは「2NE1を切ってBLACKPINKを作った」という反発もあった。
メンバー構成は当時としても国際的だった。ジス(지수)は韓国、ジェニー(제니)はニュージーランド育ち、ロゼ(로제)はオーストラリア育ち、リサ(리사)はタイ出身。韓国では「英語が話せるガールズグループ」として最初から海外を意識した設計だと語られた。
2. 2016〜2017年、「PLAYING WITH FIRE」「マジで最後のように」 ─ 韓国での定着
2016年11月の「PLAYING WITH FIRE」、2017年6月の「마지막처럼(AS IF IT’S YOUR LAST)」で、BLACKPINKは韓国のチャートを取った。特に「마지막처럼」は韓国のカラオケで女性が歌う定番曲になり、ダンスは中高生が体育祭で踊った。この時期のBLACKPINKは韓国で「かわいい」と「かっこいい」の両方を持つグループとして、TWICEやRed Velvetとは違う位置を取った。
3. 2018年、「DDU-DU DDU-DU」 ─ 韓国から世界へ
2018年6月の「뚜두뚜두(DDU-DU DDU-DU)」は転換点だった。MVは公開24時間で当時のK-POP記録を更新し、韓国の女性グループとして初めてビルボードHot 100に入った。韓国では「BLACKPINKが世界に出た年」として記憶されている。この曲の銃を撃つ振り付けは韓国中で真似され、幼稚園の発表会でも踊られた。
2019年の「Kill This Love」でBLACKPINKはK-POPグループとして初めてコーチェラに出演し、アメリカの主要メディアが取り上げた。韓国のニュースは「BTSに続く」と伝えたが、同時に「韓国での活動が少なすぎる」という不満も出始めた。
4. 2019年、YGの崩壊 ─ ヤン・ヒョンソクとバーニング・サン
2019年、YGは創業者ヤン・ヒョンソクをめぐるスキャンダルで揺れた。BIGBANGのスンリ(승리)が関与したクラブ「バーニング・サン」事件、ヤン・ヒョンソクの賭博と証拠隠滅の疑い。ヤン・ヒョンソクは代表を退き、YGの株価は急落した。韓国では「YGは終わった」という空気が広がり、BLACKPINKもその影響を受けた。2019年から2020年にかけて、韓国での新曲がほとんど出なかった。この空白期は今もファンの間で「YGの怠慢」として語られる。
5. 2020年、「How You Like That」から「THE ALBUM」へ ─ 世界的グループの完成
2020年6月の「How You Like That」はYouTubeで公開24時間の世界記録を更新し、セレーナ・ゴメスとの「Ice Cream」、そして初のフルアルバム「THE ALBUM」の「Lovesick Girls」で、BLACKPINKはビルボード200で2位を記録した。韓国の女性グループとして最高だった。
この時期、韓国では「BLACKPINKは韓国のグループなのか」という議論がメディアで出た。海外での活動が中心で韓国の音楽番組にほとんど出ない、韓国語の曲より英語の曲が多い。だが同時に、韓国政府はBLACKPINKを外交に使い始めた。2021年の国連気候変動会議のPR大使、2023年のアメリカ国賓晩餐会での公演。BTSとBLACKPINKは、韓国が世界に見せる二つの顔になった。
6. 2022年、「Pink Venom」「Shut Down」 ─ ワールドツアーと契約満了
2022年の「Pink Venom」と「Shut Down」でBLACKPINKはビルボード200で1位を取り、続くワールドツアー「BORN PINK」は女性グループとして史上最大の規模になった。2023年4月にはコーチェラのヘッドライナー。アジアのアーティストとして初めてだった。
そして2023年、YGとの専属契約が満了した。韓国のアイドルにとって7年目は分岐点で、多くのグループがここで解散する。BLACKPINKは新しい形を選んだ。グループ活動はYGと再契約し、個人活動は4人がそれぞれ別の事務所で行う。ジェニーは自分の事務所ODD ATELIER、リサはLLOUD、ロゼはTHE BLACK LABELとアメリカのアトランティック、ジスは自分の事務所BLISSOO。韓国ではこれが「YGが4人を引き止められなかった」と報じられ、同時に「新しいアイドルの形」とも評価された。
7. 2024〜2025年、ソロの時代 ─ ロゼの「APT.」と韓国の反応
2024年10月、ロゼがブルーノ・マーズと出した「APT.」は、韓国の飲み会ゲーム「아파트(アパート)」をそのまま曲にしたもので、ビルボードHot 100で韓国の女性アーティスト史上最高位を記録した。韓国ではこの曲について「私たちの飲み会ゲームが世界の曲になった」という驚きと、「海外ではこれを韓国の文化と知っているのか」という複雑な反応があった。リサの「LALISA」、ジェニーの「SOLO」、ジスの「FLOWER」もそれぞれ記録を作り、4人全員がソロで成功した女性グループは韓国では初めてだった。
2025年7月、BLACKPINKは新曲「JUMP」で完全体として戻り、スタジアム規模のワールドツアーを再開した。ソロ活動で別々の道を歩いた4人が、グループとしても続く。韓国の芸能界にとって、これは一つの答えになっている。
8. 韓国でBLACKPINKはどう見られているか
韓国におけるBLACKPINKの評価は少し複雑だ。「世界で最も成功した韓国の女性グループ」であることは誰も疑わない。だが「韓国国内でのヒット曲が少ない」「韓国での活動が少ない」「YGが曲を出さなかった」という不満は根強い。TWICEが「韓国の日常にいるグループ」なら、BLACKPINKは「海外にいる韓国の顔」だ。韓国人は彼女たちを誇りに思いつつ、少し遠くに感じている。その距離感が、BLACKPINKの韓国での特別な位置だ。
9. 日本の読者へ
日本でBLACKPINKを応援している人に、韓国で知られていることを一つ。韓国ではBLACKPINKを語るとき、必ず2NE1とYGの話が出てくる。2NE1がいなければBLACKPINKはなく、YGの混乱がなければBLACKPINKの空白期もなかった。世界的なグループの裏には、韓国の一つの事務所の栄光と崩壊がある。「APT.」を聴くとき、それが韓国の大学生の飲み会ゲームから来ていることを思い出してほしい。
まとめ
2NE1の後継として生まれ、「DDU-DU DDU-DU」で世界に出て、YGの崩壊を乗り越え、コーチェラのヘッドライナーになり、4人が別々の事務所でソロを成功させながらグループを維持する。BLACKPINKの10年は、K-POPの女性グループが「韓国のアイドル」から「世界のポップスター」になる過程そのものだった。韓国はその過程を、誇りと少しの寂しさとともに見ている。

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