チムジルバン(찜질방)完全ガイド ― 羊巻きタオル、シッケ、アカスリ、そして消えていく街の銭湯

チムジルバンのプルガマ

韓国ドラマで、タオルを羊の角のように巻いてかぶり、床に寝転がって卵をむいて食べる場面。あの場所がチムジルバン(찜질방)である。

日本のスーパー銭湯や健康ランドに一見似ているが、主役は「湯」ではなく、「男女が一緒に寝転がる熱い部屋」だという点が違う。

1. チムジルバンとはどんな場所か

チムジル(찜질)とは、体を温めて汗を出すこと。チムジルバンは、男女別の浴場(목욕탕)と、専用の館内着(찜질복)を着て男女一緒に過ごすチムジルエリア(共用スペース)が一つになった施設である。

ルーツは古い。朝鮮時代にはすでに「汗蒸所(한증소/蒸し風呂の施設)」があり、朝鮮王朝の公式記録『世宗実録(세종실록)』には国が運営していた記録が残っている。

現在のような形のチムジルバンは、1990年代前半に釜山で生まれたとされ、1990年代末のアジア通貨危機(韓国でいう「IMF危機」)のあと、数年で全国に広がった。2006年には統計庁がチムジルバンの利用料を消費者物価の調査品目に加えたほど、日常的な場所になった。

2. 利用の流れ

一般的な流れは次のとおりである。

  1. フロントで入場料を払い、館内着・タオル・ロッカーキー(リストバンド型)を受け取る。
  2. 靴を靴箱に入れ、脱衣所へ。
  3. まず浴場で体を洗う(ここは男女別で、裸になる)。
  4. 館内着に着替えて、共用のチムジルエリアへ。
  5. 中で食べたり飲んだりした分は、ロッカーキーで記録しておき、帰るときにまとめて精算する後払い方式の施設が多い。

3. 部屋の種類

プルガマ(불가마/高温の窯)、黄土房(황토방)、塩房(소금방)、炭房(참숯방)、そしてほてった体を冷ますアイス房(아이스방)などがある。

低い温度の部屋から始め、水をこまめに飲むのがコツである。

4. チムジルバンの三大名物

  • 羊巻き(양머리)タオル:2005年のMBCドラマ『私の名前はキム・サムスン(내 이름은 김삼순)』で流行した。当時「サムスンの羊巻きの作り方」がネットの検索ランキング上位に入ったほどである。
  • シッケ(식혜)と焼き卵(구운 계란):チムジルバンといえば、甘い米の飲み物シッケと、窯でじっくり焼いた茶色い卵。定番中の定番の組み合わせである。
  • わかめスープ(미역국):汗を流したあとに食べる、わかめスープとご飯。館内に売店兼食堂がある。

5. セシン(세신)― 韓国式アカスリは入浴のハイライト

緑色のアカスリ用タオル「イタリータオル(이태리타월)」で全身の垢をこすり落としてもらうサービスである。イタリータオルは名前に反して、1960年代に釜山で生まれた。イタリアから輸入した生地を使ったことが名前の由来だという説がある。

料金は、大衆浴場で2万〜3万ウォンほど。最近流行している個室のセシン専門店(1인 세신샵)は5万〜8万ウォン台である(2023年の報道による)。先に湯船につかって、体を十分にふやかしてから受けるのがコツだ。

このセシンが、いま外国人に大人気になっている。弘大(홍대/ホンデ)の個室セシン店は客の約4割が外国人という報道があり、城北区(성북구/ソンブック)のある店は9割が外国人だというルポもある。Netflixの『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の公開後、セシンやチムジルの体験予約が増えたという旅行プラットフォームの発表もあった。

6. 料金と、どこへ行けばよいか

都心の24時間型は、おおよそ1万2,000〜1万6,000ウォン(夜間は割増)。代表的なのは東大門(동대문/トンデムン)のスパレックス(스파렉스)である。

大型スパ型は2万6,000ウォン前後。釜山の新世界センタムシティ(신세계 센텀시티)にある「スパランド(스파랜드)」は大人2万6,000ウォン、営業は9時〜22時、基本の利用時間は4時間。ショッピングモール「スターフィールド(스타필드)」の「アクアフィールド(아쿠아필드)」は、河南(하남/ハナム)・高陽(고양/コヤン)・安城(안성/アンソン)にある。大型スパ型は24時間営業ではないので、宿代わりには使えない点に注意したい。

そして、なくなった場所もある。ガイドブックの常連だった龍山(용산/ヨンサン)のドラゴンヒルスパ(드래곤힐스파)は、コロナ禍の2021年に休業したまま再開しておらず、事実上閉店している。梨泰院ランド(이태원랜드)は取り壊された。ソウル駅近くのシロアムサウナ(실로암사우나)も、2020年12月に閉業したと報じられている。古いガイドブックやブログを見て訪ねると、無駄足になる。

外国人客の割合は急増している。アクアフィールドとスパランドを合わせた外国人比率は、2023年の8.7%から2025年には20.2%に。釜山のスパランドだけを見ると、2025年は46.9%に達した。

7. マナーと注意

  • 湯船やチムジルの前に、まずシャワーを浴びる。
  • 浴場・脱衣所でのスマートフォン撮影は絶対にしない。
  • タトゥー:日本のように一律で断る文化ではない。ただ2024年ごろから、一部のホテルのプールやサウナで「ノータトゥーゾーン」が登場し、議論になった。施設によって違うので、心配なら確認を。
  • 子ども:満4歳(48か月)以上は、異性の浴場に入れない(2022年6月から)。
  • 青少年:保護者が同伴していない場合、22時〜翌5時はチムジルバンに入れない。
  • 盗難:寝ている間にスマートフォンやロッカーキーを盗まれる事件が実際に起きている。貴重品はロッカーに、キーは手首に。

8. 消えていく街の銭湯

週末の朝、家族で近所の銭湯に行き、風呂上がりにバナナ牛乳を飲む。1970〜80年代の韓国ではありふれた風景だった(ピングレ〈빙그레〉の「バナナ味牛乳(바나나맛 우유)」は1974年発売)。

しかし全国の銭湯の数は、2000年の9,950軒から2024年には5,668軒へ。ソウルは1995年の1,764軒から2025年の510軒へ、71%も減った。

理由は、各家庭に浴室ができたこと、コロナ禍(2020〜2022年だけで全国730軒余りが廃業)、そしてガス・電気・水道料金の上昇である。入浴料も上がった。地域別(日本の都道府県にあたる広域自治体ごと)の平均は、2020年初めの5,000〜7,000ウォン台から、2025年初めには7,750〜1万1,000ウォンになっている。

日本の銭湯が減っていくのと同じことが、韓国でも起きている。

日本の読者へ

初めてなら、大型スパ型(スパランド、アクアフィールド)がきれいで分かりやすい。韓国らしさを求めるなら、都心の24時間型である。

ぜひ試してほしいのは、羊巻きとシッケと焼き卵。そして勇気があれば、セシン。

フロントで使える韓国語を二つ。

「어른 한 명이요(大人一人です)」
「세신 받고 싶은데요(アカスリを受けたいのですが)」

※アイキャッチ画像:2020-03-11 20.39.31 찜질방 불가마.jpg by Choikwangmo9(Wikimedia Commons、CC0)

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