韓国の食堂で日本人が驚くこと ― おかずのおかわり無料、呼び出しベル、はさみで切る肉、2人前からの注文

サムギョプサルとおかずが並ぶ韓国の食卓

韓国の食堂に入って席に着くと、まだ何も頼んでいないのに小皿がいくつも並ぶ。箸とスプーンはテーブルの引き出しの中。肉は店員がはさみでジョキジョキと切っていく。

同じ「ご飯とおかず」の国なのに、店の仕組みは日本とかなり違う。旅行の前に知っておくと戸惑わずにすむ点を、韓国の報道や公的な資料で確認できた範囲でまとめた。

1. パンチャン(반찬)は無料、おかわりも無料

キムチやナムルなどの小皿のおかず、パンチャンは、料理を注文すれば何も言わなくても出てくる。日本の居酒屋の「お通し」と違って料金はかからず、なくなればおかわりも無料というのが基本である。

韓国の食事は、ご飯と汁物を一人ずつに出し、おかずを食卓の真ん中に並べてみんなで食べる形が土台になっている。パンチャンは前菜ではなく、食事そのものの一部という位置づけだ。

ただ、この「当たり前」が物価高で揺れている。2026年1〜2月、自営業者のオンラインコミュニティで「おかわりのパンチャンを有料にすべきか」という投票があり、1,359人のうち有料化に賛成が38.5%、反対が61.5%だった。「一人で来てクッパ1杯でおかずを何度もおかわりされると赤字になる」という声がある一方、「値段も上げにくいのに、おかず代まで取ったら客が離れる」という声も根強い。

衛生面のルールもある。客が食べ残した料理の使い回しは、食品衛生法の施行規則で2009年から禁じられている。違反すれば1回目で営業停止15日、さらに3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金の対象になる。洗えばそのまま使えるサンチュやえごまの葉、ふた付きの容器から客が自分で取り分けるキムチなどは例外とされている。

おかわりは食べきれる分だけ頼むのが、いちばんのマナーである。

2. 店員は呼ぶもの ― 呼び出しベルと「ヨギヨ」

韓国の食堂では、店員が頃合いを見て注文を取りに来るのを待つより、客のほうから呼ぶのが普通である。テーブルに呼び出しベル(호출벨)があれば押す。なければ「여기요(ヨギヨ/すみません)」または「저기요(あの、すみません)」と声をかける。日本の「すみませーん」と同じ感覚で、失礼にはあたらない。

年配の女性店員を「이모(イモ/本来は母方のおば)」、店主を「사장님(社長さん)」と呼ぶ人も多い。親しみを込めた呼び方だが、旅行者は無理に真似しなくても「여기요」で十分に通じる。

3. 引き出しの中のスプーンと箸、そしてセルフコーナー

スッカラク(숟가락/スプーン)とチョッカラク(젓가락/箸)、紙ナプキンや栓抜きは、テーブルの横の引き出しに入っていることが多い。見当たらなければ、まず天板の下を探してみてほしい。水のボトルとコップも最初から置いてあるか、給水機から自分で持ってくる。日本のように、座ればお冷やとおしぼりが出てくるわけではない。

人件費の上昇で、おかわりのパンチャンを客が自分で取りに行くセルフコーナー(셀프바)を置く店も増えた。2026年7月の消費者調査(回答347人)では、「水はセルフ」に否定的な人が78%だったのに対し、おかわりのパンチャンをセルフにすることには66%が肯定的だった。韓国の人も、水くらいは持ってきてほしいと思っているわけだ。

4. 「2人前から」の壁と一人ご飯

焼肉や鍋料理の店では、メニューに「2人前以上(2인분 이상)」と書かれていることがある。日本なら1人前から頼める料理でも、韓国では一人客が断られたり、一人で2人前を注文するよう求められたりする場合がある。法律上、店がこうした条件をつけても処罰の対象にはならない。

韓国では単身世帯が1,000万を超え、全世帯の42%を占めるようになった(行政安全部〈행정안전부〉、2025年8月末)。それでも一人客を断る店は残っており、2025年11月には香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが取り上げるなど、海外でも話題になった。

一方で流れは変わりつつある。一人用メニューを置く飲食店の割合は、2022年3月の約9.7%から2025年3月には約10.4%に増えたという民間のデータがあり、一人で肉を焼ける専門店もソウルに登場している。入り口で「일 인분도 돼요?(1人前でも大丈夫ですか)」と聞くのが、いちばん確実である。

5. はさみとトングは食卓の道具

焼き網の横に、はさみ(가위)とトング(집게)が置かれる。肉は大きなまま焼き、焼けたところをはさみで一口大に切る。冷麺の長い麺も、はさみで切って食べる。

食卓でのはさみは、1970年代後半に高級カルビ店を中心に広まり、便利さから冷麺などにも使われるようになったと説明されている。店で出てくるのは食べ物専用のはさみで、工作用のものとは別である。

肉は客が自分で焼く店と、店員が焼いて切り分けるところまでやってくれる店がある。最近は「焼いてくれる店」を売りにするところも増えている。迷ったら、店員が手を出すかどうか、少し様子を見ればよい。自分で切りにくいときは「잘라 주세요(切ってください)」と頼める。

6. ご飯はスプーンで、器は持ち上げない

日本では茶碗を手に持つのが作法だが、韓国ではご飯の器も汁物の器も食卓に置いたまま食べる。ご飯と汁物は柄の長いスプーンで、おかずは箸で、と使い分けるので、器を持ち上げる必要がなかったという説明が一般的である。真鍮など金属の器は熱が伝わりやすく、熱くて持てなかったという事情も挙げられている。

もっとも、いまでは絶対の決まりというほどではなく、気楽な席ではゆるやかになっている。ご飯に箸を突き立てないこと、年長者より先に食べ始めないことも、あわせて覚えておきたい。

7. 会計はカウンターで、チップは不要

食べ終わったら、出入り口近くのカウンターで支払う。席で会計を待つのではなく、自分から立って行くのが基本だ。カードはほとんどの店で使える。

注文の方法も変わってきた。席のタブレットで頼むテーブルオーダー(테이블오더)や、入り口の券売機型キオスク(키오스크)を導入した飲食店の割合は、農林畜産食品部(농림축산식품부)の資料によると2021年の4.5%から2025年には13.0%へと約3倍になった。メニューを英語・中国語・日本語に切り替えられる機種もあり、言葉に自信がない旅行者にはむしろ助かる。

チップの習慣はない。メニューの値段は、付加価値税やサービス料を含めた最終的な金額を表示する決まりになっている。2025年7月、ソウル・汝矣島(여의도/ヨイド)の食堂がレジにチップボックスを置いたことや、ある冷麺店がキオスクの画面に「従業員の会食費」という項目を加えたことが報じられ、「ここは韓国だ」と批判が殺到した。求められても払う義務はない。

8. いくらかかるのか ― ソウルの外食価格

韓国消費者院(한국소비자원)の価格情報サイト「チャムカギョク(참가격)」による、ソウルの平均価格は次のとおりである(2026年8月時点)。

  • キムチチゲ定食(김치찌개 백반):8,769ウォン
  • カルグクス(칼국수):1万38ウォン
  • ビビンバ(비빔밥):1万1,769ウォン
  • 冷麺(냉면):1万2,692ウォン
  • キンパ(김밥)1本:3,869ウォン

サムギョプサル(삼겹살)は200g換算で2万1,321ウォン(2026年の調査)。店によって1人前の量が100〜250gほどとばらばらなので、200gにそろえて計算した数字である。メニューを見るときは、値段だけでなくグラム数も確かめたい。

9. 旅行者が気をつけたいこと

  • ブレイクタイム(브레이크타임):昼と夜の営業の間に店を閉める時間のこと。午後3時〜5時に閉める例が報じられている。背景には、一般飲食店の売上に占める食材費と人件費の割合が2024年に71.6%まで上がったことがある。遅い昼食をとるつもりなら、事前に営業時間を確かめておきたい。
  • 広蔵市場(광장시장/クァンジャンシジャン):2025年11月、メニューに8,000ウォンと書かれたスンデ(순대)を頼んだ客が1万ウォンを請求されたという動画が広まり、商人会がその店を10日間の営業停止にした。2026年1月の現地取材では、大半の屋台でカードが使えるようになり、価格表示も分かりやすくなった一方、接客や衛生面の問題は残っていると伝えられた。注文の前に、値段と量を指さしで確認するとよい。
  • ノーキッズゾーン(노키즈존):子ども連れの入店を断る店のこと。保健福祉部(보건복지부)の2023年の調査では、カフェ・ベーカリー類が76.1%、飲食店が18%だった。子ども連れの場合は、入り口の表示を見ておくと安心である。

日本の読者へ

頼まなくても出てくるおかず、ベルを押せばすぐ来る店員、引き出しの中のスプーンと箸。慣れてしまえば、どれも合理的で気楽な仕組みである。

最後に、食堂でそのまま使える韓国語をまとめておく。

「여기요(すみません)」
「이거 하나 주세요(これを一つください)」
「일 인분도 돼요?(1人前でも大丈夫ですか)」
「반찬 좀 더 주세요(おかずをもう少しください)」
「물 좀 주세요(お水をください)」
「잘라 주세요(切ってください)」
「계산해 주세요(お会計をお願いします)」

※アイキャッチ画像:Samgyeopsal table.jpg by 이동원(Wikimedia Commons、CC0)

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