この連載では、S.E.S.、少女時代(소녀시대)、f(x)と、SMエンターテインメントのガールズグループを順に取り上げてきた。今回はその次の世代、Red Velvet(레드벨벳)である。ここで書きたいのは、韓国での受け止められ方である。2014年のデビューから2026年の今までをたどってみる。
1. f(x)から5年、SMの新しいガールズグループ
Red Velvetは2014年8月1日、KBS『ミュージックバンク(뮤직뱅크)』でデビューした。最初はアイリーン(아이린)、スルギ(슬기)、ウェンディ(웬디)、ジョイ(조이)の4人。アイリーン、スルギ、ウェンディの3人は、SMの練習生公開プロジェクト「SMROOKIES」で先に紹介されていた。デビュー曲は「Happiness(행복)」で、髪の毛先をピンク、黄、青、緑に染めた姿が話題になった。
韓国メディアは、f(x)以来5年ぶりのSMのガールズグループとして注目した。事務所が掲げたのは、少女時代とf(x)の中間にあたるコンセプトだった。
同じ年の10月には、S.E.S.の「Be Natural」をリメイクして出している。SM最初のガールズグループの曲を、後輩が歌い直したわけだ。この曲が、のちに説明する「Velvet」の側の最初の曲とされる。
2015年3月、同じくSMROOKIES出身のイェリ(예리)が加わって5人になった。直後に出た「Ice Cream Cake」が、グループにとって初めての音源チャート1位である。
2. 「Red」と「Velvet」
グループ名には二つの色が入っている。強烈で明るい「Red」と、クラシカルで柔らかい「Velvet」だ。Redは弾けるようなポップ、VelvetはR&Bやバラードを中心とした大人っぽい音楽を指す。Red Velvetは、この二つを行き来することを最初から看板にしてきた。
2015年9月の1枚目のフルアルバムは、題名がそのまま『The Red』である。タイトル曲「Dumb Dumb」は、韓国の主要音源サイト7つすべてで1位を獲った。
翌2016年3月には、バラード中心のミニアルバム『The Velvet』を出した。タイトル曲はR&Bバラードの「One Of These Nights(7월 7일)」で、音楽番組で5回1位になっている。
2016年9月の「Russian Roulette(러시안 룰렛)」は、明るい曲なのにミュージックビデオにはどこか不穏な空気が漂う。この明るさと不思議さの同居も、Red Velvetの持ち味である。2017年2月の「Rookie」は、音楽番組で9回1位になった。
もっとも、すべての曲がきれいに二つに分かれるわけではない。韓国の評論でも、新しいアルバムのたびに両方の顔を混ぜてくるので、RedとVelvetの境目ははっきりしない、という指摘がある。その分かりにくさ自体が、このグループらしさだと言える。
3. 「Red Flavor(빨간 맛)」の夏
韓国メディアがRed Velvetの代表曲としてまず挙げるのが、2017年7月の「Red Flavor」である。夏のミニアルバム『The Red Summer』のタイトル曲で、発売直後に各音源サイトのリアルタイムチャートで1位になった。
この曲でRed Velvetは「サマークイーン(서머퀸)」と呼ばれるようになった。翌2018年2月には、韓国大衆音楽賞(한국대중음악상)で最優秀ポップソング賞を受けている。人気だけでなく、音楽としても評価されたわけだ。
その後も夏になるたびに、Red Velvetは季節に合わせた曲を出してきた。2018年の「Power Up」、2019年の「Zimzalabim(짐살라빔)」がそうである。韓国メディアには「夏=Red Velvet」という言い方まであり、2026年の記事でも「元祖サマークイーン」と紹介されていた。夏はRed、冬はVelvetのイメージで愛される、と書いた記事もある。
その冬の側の代表が、2017年11月の2枚目のフルアルバム『Perfect Velvet』だ。タイトル曲「Peek-A-Boo(피카부)」も、軽快な曲に謎めいたミュージックビデオを組み合わせた一曲である。翌年1月のリパッケージ盤では「Bad Boy」で活動した。2024年に韓国の音楽評論家5人がRed Velvetの名盤を推薦した企画では、この『Perfect Velvet』がいちばん多くの票を集めている。
4. 平壌で歌った「Red Flavor」
2018年4月1日、平壌の東平壌大劇場(동평양대극장)で、韓国の芸術団による公演「春が来る(봄이 온다)」が開かれた。韓国の芸術団が平壌で舞台に立つのは、2005年のチョ・ヨンピル(조용필)のコンサート以来13年ぶりだった。11組の出演者のうち、アイドルグループはRed Velvetだけだった。
ジョイはドラマの撮影で参加できず、4人で「Red Flavor」と「Bad Boy」を歌った。会場には金正恩(김정은)国務委員長も姿を見せ、公演後には出演者と記念写真を撮っている。イェリは、観客が思っていた以上に拍手をして一緒に歌ってくれたと話した。
5. 「Psycho」と、その直後の事故
2019年12月23日に出た「Psycho」は、韓国の主要音源サイトのチャートで1位を独占した。いわゆる「オールキル(올킬)」である。
評論家の評価も高い。先に触れた2024年の企画では、繊細なボーカル、優雅な佇まい、激しいビートというグループの強みを磨き上げた秀作だという声や、オルタナティブロック風の和声に切ないメロディーを乗せた手腕を「逸品」とする声があった。
ところが発売2日後の12月25日、ウェンディが『SBS歌謡大典(SBS 가요대전)』のリハーサル中にステージの装置から落ち、顔をけがして右の骨盤と手首を骨折した。Red Velvetは本番のステージに立てなかった。SBSの対応には韓国で批判が集まり、ウェンディは長い療養に入った。
6. ユニット、論争、そしてソロ
2020年7月、アイリーンとスルギがユニット「Red Velvet – IRENE & SEULGI」として「Monster」を出した。SMのガールズグループのユニットは8年ぶりで、韓国の音源・アルバムチャートで1位になった。
同じ年の10月21日、スタイリスト兼エディターの女性が、ある芸能人から理不尽な扱いを受けたとSNSに書いた。アイリーンは当日、本人と同僚に直接会って謝罪し、謝罪文を公開した。SMも会社としての責任を認めた。予定されていたオンラインのファンミーティングは取りやめになり、アイリーンが主演した映画の公開は翌年に延びた。
その間に、メンバーのソロが始まる。最初はウェンディで、2021年4月にミニアルバム『Like Water』を出した。続いてジョイが5月に、1990〜2000年代の名曲をリメイクしたスペシャルアルバムのタイトル曲「Hello(안녕)」を歌った。
2021年8月、5人は『Queendom』で戻ってきた。2019年末のアルバム以来、約1年半ぶりのグループ活動だった。
2022年3月の「Feel My Rhythm」は、バッハの「G線上のアリア」をサンプリングした曲で、韓国では今もRed Velvetの代表曲の一つに数えられる。クラシックの引用は、このグループがたびたび使う手法である。
同じ年の10月にはスルギが「28 Reasons」でソロデビューした。イェリはそれより早く、2019年に自作曲「Dear Diary(스물에게)」を発表している。
2023年11月の『Chill Kill』は、『Perfect Velvet』以来6年ぶりのフルアルバムだった。2024年6月にはデビュー10周年を記念するミニアルバム『Cosmic』を出し、8月1日の記念日にはファンに向けた曲も公開した。そして同年11月、アイリーンがデビュー10年目にして初のソロアルバム『Like A Flower』を出した。
7. 所属は分かれても、Red VelvetはSMで
SMとの再契約をめぐっては、メンバーによって判断が分かれた。スルギは2023年8月、アイリーンは2024年2月、ジョイは2025年1月に再契約した。一方、2025年4月4日、SMはウェンディ、イェリとの専属契約が終わったと発表した。ただし二人はRed Velvetとしてのグループ活動はSMで続ける。
ウェンディは同じ月、fromis_9が所属するアセンド(어센드)と契約した。イェリは5月、俳優のマネジメントを中心とするブリッツウェイエンターテインメント(블리츠웨이엔터테인먼트)に移り、本名のキム・イェリム(김예림)として演技の仕事を続けている。
ユニットも動いている。アイリーンとスルギは2025年5月に2枚目のミニアルバム『TILT』を出し、初めての単独コンサートツアーを回った。アイリーンも2026年5月から、ソロでのアジアツアーを行った。
そして2026年8月3日、5人そろってのミニアルバム『Velvet Summer』が出た。2024年の『Cosmic』から2年2か月ぶりで、所属が分かれてから初めてのグループ活動である。タイトル曲「Surfin’ Boy」はボサノバの気だるさを取り入れた曲で、作詞はジョイが一人で手がけた。韓国メディアは、「Red Flavor」や「Power Up」のような明るい夏の曲とは違う、柔らかく深い音を目指したアルバムだと紹介している。8月7日には、KBS『ミュージックバンク』でカムバックのステージを見せている。
8. 韓国での位置
Red Velvetは韓国で、いわゆる第3世代を代表するガールズグループの一つとされる。一時はTWICE(트와이스)、BLACKPINK(블랙핑크)とあわせて、3組の韓国語表記の頭の一文字を並べた「トレブル(트레블)」という呼び方もあった。韓国の通信社ニューシス(뉴시스)は2026年の記事で、海外のチャート成績では2組ほど目立たなかったが、幅広い音楽性と確かなファンダムを築いた、と書いている。
デビューの年にS.E.S.の曲を歌い直し、明るい曲と大人っぽい曲を行き来しながら、評論家が選ぶ賞まで取った。SMのガールズグループの系譜の中でも、Red Velvetは音楽そのもので語られることの多いグループである。
日本の読者へ
Red Velvetは2018年7月、エイベックスからミニアルバム『#Cookie Jar』を出して日本デビューしている。
韓国でどう聴かれてきたかを知りたいなら、RedとVelvetを交互に聴いてみることをすすめたい。最初に聴くなら、次の5曲である。
- 「Ice Cream Cake」
- 「One Of These Nights(7월 7일)」
- 「Red Flavor(빨간 맛)」
- 「Psycho」
- 「Feel My Rhythm」
そして夏が来て、韓国の記事に「サマークイーン」という言葉を見かけたら、それがまずRed Velvetのことだと思い出してほしい。
※アイキャッチ画像:레드벨벳(Red Velvet) 케이콘 재팬 2024 레드카펫 KCON JAPAN 2024 (1).jpg by TV10(Wikimedia Commons、CC BY 3.0)

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