韓国ではGoogleマップが使えない? ― ネイバー地図・カカオマップを使うべき理由と使い方、そして地図の国外持ち出し問題

ソウル地下鉄・江南駅の8番出口

韓国に着いて、いつものようにGoogleマップを開く。地図は表示されるし、店も出てくる。ところが、目的地までの徒歩ルートを出そうとすると、うまくいかない。初めての韓国旅行で多くの日本人が戸惑うポイントである。

故障でも圏外でもない。韓国には、地図データをめぐる独特の事情がある。

1. なぜGoogleマップの道案内が使えないのか

理由は、韓国政府が作った精密な地図データを国外に持ち出すことが、法律で制限されているからである。根拠になっているのは空間情報管理法(공간정보관리법)で、国が測量した基本測量成果(기본측량성과)の国外への持ち出しを原則として禁じている。背景にあるのは安全保障、つまり北朝鮮と向き合う状況で、軍事施設などの情報が海外のサーバーに置かれることへの警戒である。

Googleによると、ルート検索の計算には世界中に分散したデータセンターが必要で、そのためには縮尺5,000分の1の国家基本図を国外に持ち出す許可が要る。Googleは2007年からこの許可を求めてきた。

  • 2007年:申請するも不許可。
  • 2016年:再び申請。政府は国内にサーバーを置くことや軍事施設のぼかし処理を求めたが、Googleが応じず、11月に不許可となった。
  • 2025年2月:3度目の申請。政府の協議体は5月・8月・11月と3回にわたって結論を先送りし、11月には追加資料の提出を求めた。
  • 2026年2月27日:Googleが2月5日に提出した追加資料を審議し、条件付きで許可。精密地図が商業目的で国外に出るのは初めてである。

条件はかなり厳しい。持ち出せるのはナビや道案内に必要な基本の地図と道路網に限られ、等高線など安全保障上機微なデータは除外。元データはGoogleの国内提携企業が国内のサーバーで加工し、政府の確認を受けたものだけが出せる。衛星写真やストリートビューの軍事施設はぼかし、韓国の領土では座標を表示しない。条件を守らなければ、許可は停止・取り消しとなる。

では今はどうか。2026年8月、韓国の英字紙コリア・ヘラルドは、Googleが韓国でターンバイターン(曲がる地点ごとの案内)を含む完全な機能の提供を計画していると報じたが、開始時期は示されなかった。9月22日の電子新聞(전자신문)の報道によれば、Googleが条件の履行案を出すのは秋夕(추석/チュソク、旧盆)明けの見通しで、提出後には政府の審査が控えていた。9月初めには、韓国内の軍事施設や非武装地帯(DMZ)の衛星画像のぼかし処理が始まったという。

つまり2026年10月時点で確認できる報道の範囲では、許可は出たものの、道案内機能はまだ始まっていない、というのが正確なところである。

ちなみにAppleも、2023年に同じ申請をして不許可になり、2025年6月に再申請している。こちらは2026年2月時点の報道でも審査が続いており、結論は出ていない。

2. いまのGoogleマップでできること・できないこと

2026年8月時点の報道をもとに整理すると、次のとおりである。

  • できる:地図の表示、店や施設の検索、レビューの閲覧、公共交通機関(バス・地下鉄)の経路検索。
  • できない:徒歩のナビ、車のナビ。公共交通の経路に含まれる徒歩区間も、点線で示されるだけで道案内はない。

駅から先の数百メートルで迷いやすいのは、このためである。

3. ネイバー地図(네이버지도)― 日本語で使える定番アプリ

韓国でいちばん頼りになるのが、ネイバー地図である。日本のApp Storeでは「NAVER Maps, Navigation」という名前で出ている。2026年10月時点のアプリ紹介と公式発表をもとに、主な機能をまとめる。

  • 言語:韓国語・英語・日本語・中国語に対応。スマートフォンの言語設定かアプリ内の設定で切り替わる。ただし、車のナビ案内は英語での提供になる。
  • 公共交通:バスや地下鉄のリアルタイムの到着時刻、乗り降りの案内が出る。報道によると、乗り換えに便利な車両の扉の位置や、駅の出口番号も示してくれる。
  • ストリートビュー(거리뷰):出発前に、目的地の周りの様子を写真で確かめられる。
  • 店の情報とレビュー:訪問者のレビューは、翻訳アプリ「パパゴ(파파고)」の技術で翻訳される(2024年12月の発表)。
  • 予約:2025年11月、アプリに「予約」タブが加わった。飲食店やカフェだけでなく、レジャー、体験クラス、旅行、航空券までネイバー予約(네이버 예약)で予約でき、このタブは英語・中国語・日本語にも対応している。

4. カカオマップ(카카오맵)― 日本語はないが機能は充実

もう一つの定番がカカオマップである。2026年10月時点のApp Storeでは、対応言語は韓国語と英語の2つで、日本語はない。

それでも機能は充実していて、リアルタイムのバス情報、車・公共交通・徒歩・自転車のルート案内、ストリートビューにあたるロードビュー(로드뷰)がそろっている。英語表示で使えるので、ネイバー地図と見比べたいときの予備として入れておくと心強い。

5. 待ち合わせは○番出口で ― 出口番号と住所のしくみ

韓国の地下鉄駅には、出口ごとに番号がついている。江南(강남/カンナム)駅のように10以上の出口がある駅も珍しくない。出口を間違えると、思っていたのとはまるで違う場所に出てしまう。だから待ち合わせも「○番出口の前」と、出口番号まで決めるのが普通である。地図アプリで出口番号を確かめる習慣をつけておくと、韓国の友人との待ち合わせもスムーズになる。

住所の表し方も、日本とは違う。韓国では2014年1月1日から、道路の名前と建物の番号で表す道路名住所(도로명주소)が正式な住所になった。それまでの、土地の番号で表す地番住所(지번주소)とは、2011年7月から2013年末まで併用されていた。地番住所は今も土地に関する書類などに残っているので、同じ場所に二つの住所がある、と覚えておけばよい。

6. レンタカーで回るなら

車のナビは、韓国の定番ナビアプリのTMAPかカカオナビ(카카오내비)を使う。カカオナビは、スマートフォンの言語を英語にすると、英語の音声案内と地図情報が出る(2025年の報道による)。目的地は、ネイバー地図などで調べたハングルの名前や住所をそのまま入れるのが確実である。なお、韓国での運転のルールや日本との違いは、別の記事にまとめた。

7. 旅行前にやっておきたいこと

  • アプリは出国前に入れておく。現地に着いてから空港のWi-Fiで探すより、日本で落ち着いて言語設定まで済ませたほうが楽である。
  • 地名や店名は、ハングルで検索するのが確実である。カタカナで探して出てこないときは、ガイドブックやSNSに載っているハングル表記をコピーして貼り付ければよい。
  • 地下鉄の乗り換え検索だけなら、日本語のアプリ「コネスト韓国地下鉄路線図・乗換検索」もある。ソウル・釜山・大邱・大田・光州の5都市に対応し、駅名を日本語でも韓国語でも探せる。

バス・地下鉄の乗り方やT-money、タクシー、配達アプリについては、それぞれの記事で紹介している。

日本の読者へ

まとめると、韓国では、地図を見るだけならGoogleマップ、歩いて目的地にたどり着くならネイバー地図、である。Googleマップの道案内は2026年2月に条件付きで認められたが、10月の時点ではまだ始まっていない。いずれ状況は変わるだろうが、それまではネイバー地図を一つ入れておけば困らない。

道に迷ったときに使える韓国語を三つ。

「여기가 어디예요?(ここはどこですか)」
「○○역 몇 번 출구예요?(○○駅は何番出口ですか)」
「걸어서 갈 수 있어요?(歩いて行けますか)」

そして韓国の友人と会うときは、この一言。

「○번 출구 앞에서 만나요(○番出口の前で会いましょう)」

※アイキャッチ画像:Gangnam Station Exit 8.jpg by Christian Bolz(Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)

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