Stray Kidsを韓国側から見る ― JYPのサバイバル番組から、自主制作ユニット3RACHA、そしてビルボード200・9作連続1位まで

Stray Kidsの8人(2026年ゴールデンディスクアワード)

Stray Kids(스트레이 키즈)は、アメリカのビルボード200で9作連続1位を記録したグループである。一方で韓国では、「海外では大人気なのに国内では人気がない」という言い方を何年も聞かされてきた。この記事では、韓国でStray Kidsがどう受け止められてきたのかを、2017年のサバイバル番組から2026年の今までたどってみる。

1. 練習生が自分で組んだグループ

始まりは、2017年10月17日から12月19日まで放送されたMnetのサバイバル番組『Stray Kids』である。JYPエンターテインメントの練習生が会社と対決し、9人全員でのデビューを目指すという構成だった。

放送前の10月6日には、9人のパフォーマンスを収めた「Hellevator」のミュージックビデオが前触れなしに公開され、まだ顔の知られていなかった練習生たちが初めて姿を見せた。

このグループはメンバーの選び方が変わっている。韓国経済新聞(한국경제)によれば、パク・ジニョン(박진영)はリーダーのバンチャン(방찬)に、メンバー選びとグループのコンセプトを任せた。JYPとしては異例の決断だったという。

番組の途中で、リノ(리노)とフィリックス(필릭스)は一度脱落している。それでもパク・ジニョンは2人に最後の機会を与え、生放送の最終回で出た結論は9人全員のデビューだった。視聴者のSMS投票では、9人体制への支持が96%に上ったと報じられている。

2. デビューアルバムは全曲メンバー作

2018年3月25日、Stray Kidsはソウルの奨忠体育館(장충체육관)でショーケースを開き、正式にデビューした。翌26日に出たミニアルバム『I am NOT』のタイトル曲が「District 9」である。ヒップホップとロック、EDMを組み合わせた曲で、アルバムの8曲はすべてメンバーが作った。

下はMnet『M COUNTDOWN』でのデビューステージである。

曲作りの中心にいるのが、バンチャン、チャンビン(창빈)、ハン(한)の3人によるプロデュースユニット、3RACHAだ。デビュー曲から今まで、タイトル曲の制作を担ってきた。

2019年10月28日、JYPはメンバーのウジン(우진)が個人的な事情でグループを脱退し、専属契約も解除したと発表した。以後、Stray Kidsはバンチャン、リノ、チャンビン、ヒョンジン(현진)、ハン、フィリックス、スンミン(승민)、アイエン(아이엔)の8人で活動している。

3. 「マーラー味」と呼ばれた音

韓国でStray Kidsの音楽を語るとき、必ず出てくる言葉がある。「マーラー味(마라맛)」だ。マーラー(麻辣)は四川料理のしびれる辛さのことで、そこから、刺激が強く、好き嫌いの分かれる音楽という意味で使われる。

その代表曲が、2020年6月17日に出た1枚目のフルアルバム『GO生』のタイトル曲「God’s Menu(神메뉴)」である。曲名には「神が下したメニュー」と「新メニュー」の二つの意味が込められ、振り付けは厨房で料理をするような動きで構成されている。この曲はリリース当日、韓国の音源サイト・ソリバダ(소리바다)のリアルタイムチャートで1位になった。デビュー以来、国内の音源サイトで初めての1位だった。

同じ年の9月にはリパッケージアルバムのタイトル曲「Back Door」が続いた。韓国メディアは、この2曲でStray Kidsが「マーラー味ジャンル」を切り開いたと書いている。

2021年8月23日には、2枚目のフルアルバム『NOEASY』とタイトル曲「Thunderous(소리꾼)」が出た。コンセプトはトッケビ(도깨비)。韓国の昔話に出てくる鬼のような存在である。バンチャンはアルバム名について、「世の中に向かっていちばんうるさくインパクトを残したい」という気持ちを込めたと話している。

4. 『キングダム』で頂点に

同じ2021年、Stray KidsはMnetのボーイズグループ競演番組『キングダム:レジェンダリー・ウォー(킹덤: 레전더리 워)』に出演した。BTOB、iKON、SF9、THE BOYZ、ATEEZと6組で10週間にわたって競い、6月3日の最終回で優勝した。最終回に集まった投票数は130万3798票である。

『キングダム』で話題になったのが、「신뚜두뚜두(シントゥドゥトゥドゥ)」のステージだ。映画『デッドプール』へのオマージュを盛り込んでおり、これがきっかけでライアン・レイノルズからフィリックスにデッドプールのマスクが届いたという。

ファイナルで披露したのが「WOLFGANG」である。

5. 「韓国では人気がない」は本当か

2022年3月18日に出たミニアルバム『ODDINARY』のタイトル曲が「MANIAC」である。

2023年6月の3枚目のフルアルバム『★★★★★(5-STAR)』は、韓国のアルバムチャート・ハンターチャート(한터차트)で初動461万7499枚を記録し、K-POPの新記録と報じられた。タイトル曲は「S-Class(특)」である。

同年11月の「LALALALA(락〈樂〉)」は、ビルボードHOT100で90位に入った。K-POPの第4世代ボーイズグループとして初めてのランクインだった。

アルバムがこれだけ売れても、韓国では「スキズ(스키즈、Stray Kidsの略称)は国内では人気がない」という声が消えなかった。根拠としてよく挙げられるのが、メロン(멜론)など国内の音源チャートでの成績である。

2026年7月、マネートゥデイ(머니투데이)に載った音楽評論家キム・ソンデ(김성대)のコラムは、これを「錯覚」だと書いた。初動400万枚を超えたアルバムや、Spotifyでの再生数を挙げ、音源チャートの順位だけで人気は測れないという立場である。そのうえで、温度差の理由の一つとして3RACHAの「マーラー味」への好き嫌いを挙げた。国内の音源チャートでは聴きやすい曲が上位に入りやすく、複雑で刺激の強いStray Kidsの音楽は、狭く深いファン層を生むタイプだという分析だ。

6. ビルボード200、9作連続1位

『ODDINARY』は、2022年4月2日付のビルボード200に初めて入り、いきなり1位になった。韓国のアーティストとしては、BTSとSuperMに続いて3組目である。

ここから連続記録が始まる。『MAXIDENT』『★★★★★(5-STAR)』『樂-STAR』『ATE』『合(HOP)』と1位が続いた。2024年7月の『ATE』のタイトル曲「Chk Chk Boom」では、ミュージックビデオにライアン・レイノルズとヒュー・ジャックマンが出演している。

2025年8月の4枚目のフルアルバム『KARMA』で7作連続。最初の7作がすべて1位で初登場したのは、ビルボード200の70年の歴史で初めてと報じられた。タイトル曲は「CEREMONY」である。

同年11月の『SKZ IT TAPE』シリーズ『DO IT』で8作連続となった。ダブルタイトル曲は「Do It」と「DIVINE(신선놀음)」である。

そして2026年8月7日、ミニアルバム『THIS & THAT』で9作連続1位を達成した。アメリカでの初週の成績は36万9000ユニットで、自己最高である。タイトル曲「This & That」はHOT100で38位に入り、グループの最高順位を更新した。

7. 7年目の国内スタジアム

2024年8月、ソウルのKSPO DOMEからワールドツアー「dominATE」が始まった。このツアーは、2025年10月18日と19日の仁川アシアード主競技場(인천아시아드주경기장)公演で幕を閉じた。デビューから7年で、初めての国内スタジアム単独公演だった。

2026年6月24日には新しいワールドツアーと同じタイトルのデジタルシングル「RUN IT」を出した。7月から8月にかけてのソウル公演はKSPO DOMEで5回開かれ、全公演が売り切れた。

8. JYPらしくないJYPのグループ

これまでのJYPのボーイズグループは、パク・ジニョンが書いた曲でデビューすることが多かった。Stray Kidsは最初から、曲作りもタイトル曲選びもメンバーに任された。韓国経済新聞のコラムは、これを業界の慣行では前例の少ない選択と評している。

同紙の別の記事によると、2026年8月14日時点の著作権協会への登録曲数は、バンチャンが239曲、チャンビンが203曲、ハンが201曲である。パク・ジニョンはアメリカでの成功を祝ってメンバー一人ひとりに金20ドン(돈、約75グラム)を贈り、カムバックの際には「いつものように、うちのスキズは本当にうまくやる」とコメントした。メンバー全員は2024年7月、契約満了を半年ほど先に控えた時点でJYPとの再契約を終えている。

音楽以外の一面も知られている。公式YouTubeでは自主制作のバラエティ『SKZ CODE』が続いている。

フィリックスは2024年7月、MBCのトーク番組『ラジオスター(라디오스타)』に出演し、顔立ちとはかけ離れた低い声から「洞窟ボイス(동굴 목소리)」と紹介された。2023年からはルイ・ヴィトンのアンバサダーを務めている。ヒョンジンは2024年2月、ヴェルサーチェのグローバルアンバサダーとしてミラノのショーに出席した。

9. 論争と兵役

2021年2月には、ヒョンジンに学生時代のいじめ疑惑が持ち上がった。JYPは、関係者の証言が大きく食い違い、すべての内容を事実と確認することはできなかったとしながらも、本人の未熟で不適切な過去の言動が人を傷つけたことを認めた。ヒョンジンは直筆の手紙で謝罪している。

2026年8月6日の『THIS & THAT』発売記念記者会見では、兵役の話題が出た。オーストラリア国籍のバンチャンには兵役の義務がなく、1998年生まれのリノが最初の入隊者になる見通しだと報じられている。リノは「国防の義務は当然」「すぐ行ってきます」と話し、ほかのメンバーが冗談で送り出そうとすると「なんで僕だけ送るの」と返して会場を笑わせた。筆者は、2026年10月の時点で具体的な入隊日の公式発表を確認できていない。

日本の読者へ

日本では2026年8月末、海外の男性アーティストとして初めて東京の国立競技場で単独公演を行い、2日間で約14万人を集めた。

一方、韓国では「マーラー味」の音楽は好き嫌いが分かれ、「国内では人気がない」と言われつづけてきた。それでも路線を変えず、自分たちの音を作りつづけて記録を塗り替えたのがStray Kidsである。

最初に聴くなら、次の5曲をすすめたい。

  • 「District 9」
  • 「God’s Menu(神메뉴)」
  • 「Thunderous(소리꾼)」
  • 「S-Class(특)」
  • 「This & That」

※アイキャッチ画像:Stray Kids at the 40th Golden Disc Awards, January 10, 2026 (1).png by K-POPIT 케이팝잇(Wikimedia Commons、CC BY 4.0)

コメントをどうぞ