韓国のトイレ事情 ― 「紙は流す?ごみ箱へ?」問題、無料の公衆トイレ、ビデ、そして地下鉄・カフェのトイレ

ソウル大公園の公衆トイレ

韓国旅行の経験がある人なら、個室の便器の横に置かれたごみ箱を見て、使ったトイレットペーパーをここに捨てるのかと戸惑ったことがあるかもしれない。

結論から言うと、今の韓国の公衆トイレでは、紙は便器に流すのが基本である。ただ、そうなったのは意外と最近のことだ。

1. 「紙は流す?ごみ箱へ?」問題

転機は2018年1月1日。公衆トイレの管理基準を定めた「公衆トイレ等に関する法律施行令(공중화장실 등에 관한 법률 시행령)」の改正が施行され、次のように決まった。

  • 大便器の個室の中には、ごみ箱を置かない。
  • ただし、障害者・高齢者・妊婦などが使える便器がある個室と、乳幼児のおむつ交換台がある個室は例外。
  • 女性用の個室には、生理用品を捨てる回収ボックス(위생용품 수거함)を置く。

自治体の案内によれば、守らない場合はまず改善命令、それでも改善されなければ100万ウォン以下の過料となる。

では、なぜそれまで紙をごみ箱に捨てていたのか。2017年の世界日報(세계일보)の記事によると、1988年のソウル五輪を前にしゃがみ式の便器を洋式に替える事業が始まったが、当時は新聞紙や質の悪い紙を使う人が多く、便器がよく詰まった。そこで便器の横にごみ箱を置くようになったという。紙の質が上がってからも、「紙を流すと詰まる」という意識と習慣だけが残った。当時の行政自治部(행정자치부、現在の行政安全部〈행정안전부〉)は、紙が原因で詰まることはほとんどなく、水圧など別の要因が大きいと説明している。

実はソウルの地下鉄は、法の施行より先に動いていた。5〜8号線は2015年4月から、1〜8号線の全駅では2017年8〜9月から、個室のごみ箱をなくしている。2012年の試行直後は詰まりが最大6.6倍に増えたが、定着後は元の水準に戻ったという。

とはいえ、ごみ箱が完全に消えたわけではない。2019年の世界日報の取材では、近所の公園や汝矣島(여의도/ヨイド)の商業ビルのトイレに、まだごみ箱が置かれていた。家庭では今もごみ箱を使うところが多いと報じられている。迷ったら、便器のそばの貼り紙を見るのがいちばん確実である。

2. 公衆トイレは無料で、あちこちにある

韓国の公衆トイレは、ほとんどが法律に基づいて国や自治体が設置・運営しており、無料で使える。2025年のアジア経済(아시아경제)の記事では、海外の掲示板レディットに、韓国の公衆トイレがきれいで無料なことに驚いたという旅行者の投稿が載り、大きな反響を呼んだと紹介している。

地下鉄の駅のトイレも無料だ。改札の外にあるトイレに行きたいときも心配はいらない。ソウル交通公社(서울교통공사)などソウル市が運営する地下鉄では、交通カードで降りて同じ駅・同じ路線の改札から15分以内に乗り直せば、基本運賃がかからない(1回の乗車につき1回まで)。2026年6月からは、KORAIL(코레일)が運営する首都圏の路線にも広がった。

街なかには、開放トイレ(개방화장실)もある。公共機関のトイレのほか、自治体が指定した民間ビルのトイレで、誰でも使えるようにしたものだ。自治体は指定したビルにトイレットペーパー代などを補助しており、ソウル・江南区(강남구/カンナム区)の場合、消耗品代として月最大15万ウォンを支援している。

探すときは、ソウル市の地図サービス「スマートソウルマップ(스마트서울맵)」の「都市生活地図」から「公衆トイレ」を選ぶと、近くのトイレが表示される。ネイバー地図(네이버지도)やカカオマップ(카카오맵)で「화장실(トイレ)」と検索してもよい。

3. カフェ・食堂のトイレは「暗証番号」がカギ

カフェや食堂のトイレは、誰でも自由に入れるとは限らない。トイレのドアに鍵をかけ、レシートに暗証番号を記載したり、店員から鍵を借りて使う方式にしたりしている店が以前からある。トイレの場所と番号は、注文のときに聞いてしまうのが早い。

最近は、注文せずにトイレだけ使う人に2,000ウォンを求めるカフェが話題になった(2026年の報道)。弁護士の見解として、カフェのトイレは店の客のための私的な施設なので、事前にはっきり告知していれば原則として違法ではないとも報じられている。公衆トイレと違い、店のトイレは客のためのものと考えておきたい。

4. ビデはどれくらい普及しているか

日本では温水洗浄便座をTOTOの商品名から「ウォシュレット」と呼ぶことが多いが、韓国では一般にビデ(비데)と呼ぶ。2019年のデジタルタイムス(디지털타임스)の記事によれば、韓国では1990年代初めに本格的に普及し始め、1990年代後半までは富裕層のぜいたく品だった。2000年代に多くのメーカーが参入して市場が急成長し、普及率は40%に達したという(メーカー提供の記事で、調査元は示されていない)。

5. トイレの安全対策

韓国では、トイレでの盗撮(불법촬영)への警戒が強い。法律が改正され、2023年7月からは、条例で定めた公衆トイレに、市長・郡守(郡の長)・区長が非常ベル(비상벨)などの安全設備を設けることが義務になった。非常ベルは、施設の管理者か管轄の警察に、すぐつながる装置である。行政安全部の事業では、非常ベルの作動状況と盗撮機器の有無を半年に1回点検している。

ソウル市は2016年8月から、盗撮カメラを探す「女性安心保安官(여성안심보안관)」を運営してきた。2018年には、市内2万554か所の公衆トイレを、清掃員など8,157人で毎日点検する方針を発表している。トイレで「비상벨(非常ベル)」と書かれたボタンを見かけたら、いざというときに押せばよいと覚えておこう。

6. 高速道路のサービスエリアのトイレ

ドライブ旅行で寄る高速道路の休憩所(휴게소)のトイレも、年々進化している。2016年の中央日報(중앙일보)英語版によると、IoT技術で空いている個室を入口のモニターに表示するトイレが約15か所あり、男性用は青、女性用は赤で入口を色分けしている。

行政安全部などが主催する「美しいトイレ大賞(아름다운 화장실 대상)」では、2024年に韓国道路公社(한국도로공사)の望郷休憩所(망향휴게소)のトイレが大賞を受けた。韓屋(한옥)の格子模様を取り入れた内装で、1日約8,000人が利用するという。

7. 覚えておきたい韓国語

  • 「화장실 어디예요?(トイレはどこですか)」
  • 「휴지 있어요?(トイレットペーパーはありますか)」
  • 「화장실 비밀번호가 뭐예요?(トイレの暗証番号は何ですか)」
  • 表示:남(男)、여(女)、남자화장실(男子トイレ)、여자화장실(女子トイレ)
  • 貼り紙:「물을 내려 주세요(水を流してください)」、「휴지는 변기에(紙は便器に)」

日本の読者へ

まとめると、韓国の公衆トイレでは紙は便器に流す。ごみ箱が置いてあっても、まず貼り紙を確認しよう。地下鉄の駅や開放トイレは無料で、地図アプリで簡単に探せる。カフェではレシートの暗証番号を見逃さないこと。

ポケットティッシュを一つ持っておくと、紙が切れていたときにも安心である。

いざというときは、この一言で十分だ。

「화장실 어디예요?(トイレはどこですか)」

※アイキャッチ画像:Seoul Grand Park toilet 20180420.jpg by Holiakim(Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)

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