Dynamic Duoを韓国側から見る ― 「3人より優れた2人」。ヒップホップを茶の間に届け、『SHOW ME THE MONEY』の後も残った20年

Dynamic Duoのチェジャとゲコ(MIDEM 2014)

『SHOW ME THE MONEY(쇼미더머니)』以前の韓国ヒップホップをたどってきたシリーズも、今回で最後である。Uptown、Drunken Tiger、Verbal Jintに続いて取り上げるのは、Dynamic Duo(다이나믹 듀오)だ。ゲコ(개코)とチェジャ(최자)の2人組で、2024年にデビュー20周年を迎えた。韓国でこのデュオがどう受け止められてきたのかを、前身のグループ時代から2026年の今までたどってみる。

1. 前身はCB Mass

2人の出発点は、3人組のCB Mass(씨비매스)である。ゲコ、チェジャ、コビン(커빈)の3人で、2000年にデビューした。2001年には「Whistle(휘파람)」を、MBCの音楽番組『音楽キャンプ(음악캠프)』でも歌っている。

同じ2001年に、KBSで「Real(진짜)」を歌った映像も残っている。

CB Massは2003年に解散する。残ったゲコとチェジャは、翌2004年に2人組のDynamic Duoとして再出発した。このとき掲げたキャッチフレーズが「3人より優れた2人(셋보다 나은 둘)」である。

2人は、Drunken Tigerを中心とするクルー、ムーブメント(무브먼트)の一員でもあった。このクルーについては前々回の記事で書いたので、ここでは繰り返さない。

2. 2004年『Taxi Driver』と「Ring My Bell」

Dynamic Duoとしてのデビューは、2004年5月の1stアルバム『Taxi Driver』だ。タイトル曲「Ring My Bell」には、Brown Eyed Soul(브라운아이드소울)のナオル(나얼)が参加している。ラップにナオルの歌うサビを組み合わせた曲である。以前書いた韓国ヒップホップの歴史の記事でもこの曲は紹介したので、ここでは音源のほうを載せておく。

2005年10月の2ndアルバム『Double Dynamite』からは、ジョンイン(정인)が参加した「Go Back(고백)」。「고백」は告白という意味で、英語タイトルの「Go Back」と音を重ねている。2025年にKBSで歌った映像も載せておく。

2007年5月の3rdアルバム『Enlightened』からは「출첵(出席チェック)」。これもナオルとの曲だ。2024年にはKBS『ザ・シーズンズ(더 시즌즈)』で、司会のZICO(지코)の前で歌っている。

3. 自分たちのレーベル、アメーバカルチャー

2人はアーティストであると同時に、経営者でもある。2人が中心になって立ち上げたレーベルが「アメーバカルチャー(아메바컬쳐)」で、2020年9月に創立15周年を迎えている。ニュースサイトのザ・ファクト(더팩트)は、単細胞のアメーバが細胞分裂するように、優れたミュージシャンを次々と見つけて育ててきた、とこのレーベルを紹介した。

2009年にはSimon Dominic(사이먼 도미닉)とE SENS(이센스)のSupreme Team(슈프림팀)がデビューし、2010年にはプロデューサーのPrimary(프라이머리)が加わった。2015年の時点では、Zion.T(자이언티)やCrush(크러쉬)も所属していた。韓国のR&Bやヒップホップを聴いていると、どこかでこのレーベルの名前に行き当たる。

2012年の記事で、芸能メディアのテンアジア(텐아시아)はアメーバカルチャーを、アイドルや韓流という成功の方程式とは関係なく、やりたい音楽をやるという目標を貫く人たち、と紹介している。

4. 2人そろって入隊、そして復帰

2009年10月6日、5thアルバム『Band of Dynamic Brothers』を出した。その6日後の10月12日、ゲコとチェジャは2人そろって入隊する。京畿道(경기도)の議政府(의정부)にある訓練所に入ったと、当時の英字紙コリアタイムズ(코리아타임스)は伝えている。韓国の兵役制度については、以前の記事を読んでほしい。

このアルバムに入っているのが「Guilty(죽일 놈)」だ。「죽일 놈」は、直訳すると「殺されて当然の奴」、つまりひどい奴という意味である。ミュージックビデオは以前の歴史記事で紹介したので、ここでは「Go Back」と続けて歌った、2025年のMnetのライブ映像を載せる。

兵役を終えた2人は、2011年に6thアルバム『Digilog 1/2』で戻ってきた。同じ2011年の「Friday Night(불타는 금요일)」は、韓国語のタイトルを直訳すると「燃える金曜日」である。2026年10月のKBS『開かれた音楽会(열린음악회)』でも、この曲を歌っている。

翌2012年1月には「Without You(거기서 거기)」が続いた。

5. 「14年目の地上波初1位」が意味するもの

『SHOW ME THE MONEY』以前、ヒップホップが韓国でどんな位置にあったのか。それがよく分かる出来事がある。

2013年7月、7thアルバム『Lucky Numbers』のタイトル曲「BAAAM」を出した。UVのミュージ(뮤지)が参加した曲で、KBS『ミュージックバンク(뮤직뱅크)』の1位を獲った。チェジャは「14年目にして地上波で初めて1位を獲った」と語っている。CB Mass時代から数えると、それだけの時間がかかったのである。

曲は広く知られていても、アイドルと並んで地上波の音楽番組で1位を争う存在ではなかった。『SHOW ME THE MONEY』以前のヒップホップは、そういう位置にあった。チェジャは2012年のインタビューで、母親くらいの世代でもヒップホップを気軽に受け入れるほど、世間の見方がだいぶ変わったと話している。裏を返せば、それまではそうではなかったということだ。

2014年にはアメリカのプロデューサー、DJ Premierと組んだ「AEAO」を出した。

6. 『SHOW ME THE MONEY』との距離

『SHOW ME THE MONEY』は2012年に始まり、ヒップホップを若者の主流に押し上げた。Dynamic Duoは2017年のシーズン6に、プロデューサーとして出演している。

ただ、すぐに引き受けたわけではない。ゲコは制作発表会で、過去の番組は文化的な部分より刺激的な編集が多かったように思う、と迷った理由を明かした。出演を決めたのは、Tiger JK(타이거 JK)やBizzy(비지)、パク・ジェボム(박재범)、Dok2(도끼)もプロデューサーとして出ると聞いたからだという。番組のプロデューサー特別公演では、自分たちが選んだラッパーたちと一緒にステージに立っている。

同じ2017年には、EXOのチェン(첸)と組んだバラード「nosedive(기다렸다 가)」も出している。

7. 2023年、TikTokと『ストリート・ウーマン・ファイター2』

2023年、9年前の「AEAO」がTikTokで再び広がり、7月にはTikTokの韓国人気チャートで1位になった。この逆走で、Dynamic Duoは9年ぶりにランキング形式の音楽番組に出演している。

同じ年の9月には、Mnet『ストリート・ウーマン・ファイター2(스트릿 우먼 파이터2)』のミッション曲「Smoke」をプロデュースし、ラッパーのイ・ヨンジ(이영지)と歌った。Melonの日間チャートで最高2位、10月の月間チャートで3位である。ザ・ファクトは、2人を「停滞したヒップホップシーンの救世主」と書いた。

大学祭(대학 축제)の常連でもある。2023年の春も、韓国技術教育大学(한국기술교육대)や漢陽大学(한양대)ERICAキャンパスのラインナップに名前があった。大学祭のラインナップは、その年に学生から支持される歌手が分かる物差しだと言われる。そこに、デビュー20年近いヒップホップデュオが今も入っている。

8. 20周年と、その先

2024年3月、10thアルバム『2 Kids On The Block』を出した。小学6年生で出会った2人が、デビュー20周年を迎えるまでの物語を込めたアルバムだ。タイトル曲の一つ「Pitapat(피타파)」には、pH-1とJUNNYが参加している。9月にはスペインやイギリスなどヨーロッパ5か国を回り、12月の単独コンサート『たまに、長く会おう(가끔씩 오래 보자)』は5分で完売した。

2025年1月には、GUMMY(거미)と初めてのコラボ曲「Take Care」を出している。

長く続く理由について、2人は2024年のインタビューで、互いの役割が違うことを挙げている。チェジャは人やコンテンツを担当し、ゲコはスタジオで曲を作ることに集中する。今いちばん大事なのは健康診断で、車椅子に乗ってでも2人でステージに立ちたい、とも話していた。

日本の読者へ

韓国ヒップホップというと、日本では『SHOW ME THE MONEY』やそこから出てきたラッパーを思い浮かべる人が多いかもしれない。けれども、その前にもヒップホップを茶の間に届けてきた人たちがいた。Uptownが道を開き、Drunken Tigerが本物のヒップホップを持ち込み、Verbal Jintが韓国語のラップを磨いた。そしてDynamic Duoは、それを誰もが口ずさめる歌にした。4回のシリーズで書きたかったのは、この流れである。

最初に聴くなら、次の5曲である。

  • 「Ring My Bell」
  • 「Go Back(고백)」
  • 「Friday Night(불타는 금요일)」
  • 「BAAAM」
  • 「Smoke」

20年たっても、2人は大学祭のステージにも音楽番組にも立っている。『SHOW ME THE MONEY』以前を知る世代にも、以後に育った世代にもいちばん届いているのは、このデュオかもしれない。

※アイキャッチ画像:Interview with Dynamic Duo for Koreanews.fr at MIDEM festival 2014 5s.jpg by KoreaNews France(Wikimedia Commons、CC BY 3.0)

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